冬がこっそり、春をこぼした日。
2月の終わり、冬の寒さがまだ少し居座る季節。今回は、静岡県浜松市天竜区、道の駅「いっぷく処横川」の裏手にひっそりと佇む『キャンプすがり2』を訪れました。天竜の深い緑に囲まれ、まるで自分だけの隠れ家を見つけたような高揚感に包まれます。凛とした空気の中で楽しむ焚き火の温もりと、静寂の中に響く自然の音。日常を離れ、心ゆくまで自分自身と向き合える贅沢なキャンプのひとときを、現地の空気感と共にお届けします。
設営さえも楽しみに変える、S’moreの「TETTO」
今回のキャンプの主役は、S’more(スモア)のワンポールテント「TETTO(テット)」。 その特徴的なフォルムは、一歩足を踏み入れた瞬間から特別な存在感を放ちます。このテントの最大の魅力は、なんといっても「張り方の自由度」です。 フロントのダブルジッパーを活用し、ポールを追加することで広い前室(キャノピー)を作ることができます。

今回は冬の冷たい風を避けつつ、外の景色を楽しめる絶妙なレイアウトで設営しました。
また、素材にはTC(ポリコットン)が採用されており、焚き火の火の粉に強く、結露しにくいのが嬉しいポイント。
さらに、このテントには標準で煙突穴が装備されています。マジックテープで簡単に開閉でき、薪ストーブとの相性は抜群です。
火を入れた直後、煙突からは真っ白な煙が勢いよく立ち上ります。これは薪が熱分解され、まだ炎として燃え切りきっていない「不完全燃焼」の状態。ストーブの燃焼が安定し、煙が透明に透き通っていくまでの間、あえてテントの外に立ち、冬空の下で愛用の「TETTO」をじっと眺めて過ごします。冷たい空気の中、自分の城から煙がたなびく光景は、どこか誇らしくて愛おしいものです。火を育てるこのわずかな待ち時間さえも、ソロキャンプの大切な儀式のように感じられます。


遅い朝食のメニューに選んだのは、揚げたての唐揚げ。朝から揚げ物は少し重いと感じるかもしれませんが、設営という心地よい運動を終えた身体には、そのボリュームがむしろ心地よく響きます。
カリッと揚がった衣を噛みしめると、肉汁の旨味がじゅわっと広がり、設営で消費したエネルギーがじわじわと満たされていくのを感じます。
冷えた空気の中でいただく熱々の唐揚げ。この「重さ」さえもエネルギーに変えてしまえるのは、自由なソロキャンプの時間だからこそ許される、最高にわがままで贅沢な選択でした。

朝食でお腹をしっかりと満たした後は、少し身体を動かすことにします。次なる作業は、この後の穏やかな時間を支えてくれる大切な「薪割り」です。冬のソロキャンプにおいて、薪は暖を取るため、そして料理を作るための生命線。その準備に精を出す時間もまた、欠かせない楽しみの一つです。

斧を振り下ろすごとに、パカンと小気味よい音を立てて薪が割れていく。天竜の静かな山間に、その乾燥した音が心地よく響き渡ります。
設営に続く適度な運動は、冬の寒さで縮こまっていた身体を芯から温めてくれます。一振りごとに重なる薪の山を眺めていると、不思議と心が整っていくような、無心になれるひとときです。
薪割りで心地よい汗を流した後は、お待ちかねの至福の時間がやってきます。キンキンに冷えたビールを取り出し、合わせるのは、私が心から尊敬するデザイナーの方からいただいた大切なバカラグラスです。
無骨な森に、クリスタルの輝きを。バカラで味わう至福の一杯
キャンプ場でバカラ、という一見ミスマッチな組み合わせ。しかし、クリスタルの重厚な輝きは、無骨なキャンプギアの中でも凛とした美しさを放ちます。グラスに注がれたビールが、冬の淡い光を透かして宝石のように輝く。指先に伝わる冷たさと、重厚感のある手触りが、飲む前から気分を最高潮に引き上げてくれます。
一気に喉を潤すと、ホップの苦味と共に、薪割りで火照った身体に染み渡っていくのが分かります。天竜の豊かな自然の中、一流のデザインに触れながら味わう一杯。この上ない贅沢なギャップを楽しみながら、静かに流れる贅沢な午後を噛み締めます。


喉を潤した後は、少し腰を据えて「キャンプすがり2」のフォレストサイトを散策することにします。一歩足を踏み入れると、そこには道の駅のすぐ裏手とは思えないほど濃密な、天竜の森の静寂が広がっています。
木々の間を縫うように歩けば、足元でカサカサと鳴る落ち葉の音が心地よく響きます。高く伸びた杉や檜が空を遮り、隙間から差し込む冬の柔らかな光が、森の表情を刻一刻と変えていく。このサイトの魅力は、整備されすぎない自然本来の起伏が残っているところです。次はどの位置にテントを張ろうか、どこから朝日が差し込むのか。そんな想像を巡らせながら歩く時間は、キャンパーにとって至福のひとときです。

ふと立ち止まれば、冷たい風が木々を揺らす音と、遠くで聞こえる川のせせらぎ。人工的な音が遮断されたこの空間では、自分の呼吸さえも一つの風景の一部になったような感覚に陥ります。
森の深呼吸に同調するようにゆっくりと歩を進める。この静かな探索が、キャンプの充足感をより深いものにしてくれます。
散策を続けていると、建設中の新しいトイレ小屋を見つけました。まだ内装の仕上げ段階のようで、便器などは設置されておらず水回りも未完成ですが、小屋そのものはすでにしっかりとした佇まいで完成しています。
木の温もりが感じられる真新しい建物は、このフォレストサイトの雰囲気に溶け込むように佇んでおり、これからの進化を予感させてくれます。すぐ側には洗い物ができる水場も用意されており、まだ準備中とはいえ、少しずつ使い勝手が良くなっていくキャンプ場の息遣いを感じることができました。


サイト内を流れる小川に新しい橋が架けられているのに気づきました。以前は足元に気を使いながら渡っていた場所ですが、この橋の新設によって対岸への移動がぐっとスムーズになりそうです。
木の質感を活かした質実剛健な造りの橋は、周囲の景観を損なうことなく、森の風景に自然と馴染んでいます。こうした細かなアップデートからは、オーナーさんの「より快適に過ごしてほしい」という温かな配慮が伝わってくるようです。
移動が楽になることで、散策の範囲も広がり、このキャンプ場の持つポテンシャルをより深く楽しめるようになりますね。新しく整備されたトイレ小屋、そしてこの橋。訪れるたびに少しずつ表情を変え、進化を続ける『キャンプすがり2』の姿に、これからのさらなる発展がますます楽しみになりました。
日本昔話の世界へ。焚き火に吊るしたおでんと、冬の夜の静寂
散策を終えて拠点に戻ると、辺りは少しずつ夜の気配に包まれてきました。今夜の夕食に選んだのは、冬キャンプの定番「おでん」です。
焚き火の上に三脚を立て、吊り下げ式の鍋を火にかけます。ゆらゆらと揺れる炎が鍋の底を舐め、湯気がゆっくりと立ち上る。その光景を眺めていると、まるで日本昔話に出てくる囲炉裏を囲んでいるような、どこか懐かしく温かい気持ちに包まれます。
パチパチとはぜる薪の音を聞きながら、琥珀色のだし汁の中で具材が静かに踊る様子に、思わずじっと見惚れてしまいました。最新のギアに囲まれていながらも、味わっているのは原始的で普遍的な豊かさ。火の粉が舞い、暗闇の中に浮かび上がる吊り下げ鍋のシルエットは、それだけで最高のご馳走です。


味がしっかり染み込んだ熱々のがんもどきや大根を頬張れば、冷えた身体にじわりと幸せが広がります。古き良き日本の情景に思いを馳せながら、天竜の夜は静かに更けていきました。
FOREsLAKE店長 小川せせらぎ
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